マウントアダプターNikonG-SonyEのレビュー
レンズのマウントアダプターを使ってみましたので、使用感想をレビューしてみたいと思います。
今回はK&F Concept社製のアダプターです。同製品を使用すると、ニコンレンズをソニーのα Eマウントミラーレス一眼レフで使用することができます。実際にSony α7RIIで試してみました。
撮影してみたところ、Nikonレンズの写りを損なわずに写真撮影を楽しむことができる良い製品でした。また、値段は3,000円を下回る安い価格設定となっています。この値段と性能で手に入るマウントアダプターとしては、とても良い品だと言えそうです。
マウントアダプターはK&F Concept社の製品情報ページまたは、Amazonから購入する事ができます。
K&F Concept 製品情報
Nikon G レンズ - Sony NEX Eボディマウントアダプター(JPKF06.070)
当記事では、マウントアダプターの外観や作例、また詳細な使用感想、α7RIIの等倍画像サンプルを撮影して、レビューをまとめました。ニコンのレンズをソニーのミラーレスで使いたい方に参考となりましたら幸いです。
目次
使用感想
まずは結論です。冒頭でも触れましたが「K&F Concept製マウントアダプター NikonG-SonyE」は、Nikonレンズの切れ味(解像度)を損なわずに撮影できるのがメリットです。
巷で販売されているマウントアダプターは、片ボケが発生する製品が中には存在します。片ボケとは、撮影画像の端でピントが合わない現象の事です。
しかし、このアダプターは装着時の感触がしっかりしており、尚且つ撮影した感想も、信頼できる写りだと感じました。詳しくは記事後半にて等倍画像をご覧ください。
ただし、気になる点もあります。
- 使用できるニコンレンズの種類に制約がある
- すべてのレンズがマニュアルフォーカスとなる
- 正確な絞り値(F値)が把握できない
- レンズ撮影情報(Exif)が記録されない
- カメラの手ぶれ補正を有効にしたい時は焦点距離を設定し直す必要がある
- 内面反射によりフレアが写り込むケースが稀にある
- 最短撮影距離が若干伸びる
同製品は、上記で挙げたような内容がデメリットだと感じました。購入検討の際にはこれらを考慮して選ぶと良さそうです。
撮影作例
K&F Concept製マウントアダプター NikonG-SonyEで何枚か試写してみました。以下の写真は、近くのキャンドルナイトへ遊びに行ってきた時の様子です。全て手持ちのスナップ撮影になりますが、宜しければご覧ください。
使用カメラはソニーα7R2と、シグマの魚眼レンズ(ニコン用)、シグマの35mm(ニコン用)、ニコンの85mmでした。
α7IIシリーズのカメラでは、マウントアダプターを使用したレンズに対しても手ブレ補正が使えるのが大きなメリットです。キャンドルなどの暗い夜景シーンでも手ブレを防ぎながら綺麗に撮影する事ができました。
詳細レビュー
ここからは、K&F Concept製マウントアダプターNikonG-SonyEの詳細な部分を見ていきたいと思います。
対応しているカメラ
マウントアダプターは、APS-CのNEX・α5000・α6000シリーズや、35mmフルサイズのSony α7、α9に対応しています。
カメラのシリーズ名 | モデル名 |
---|---|
Sony α5000シリーズ | α5000、α5100 |
Sony α6000シリーズ | α6000、α6300、α6500 |
Sony NEXシリーズ | NEX-3、NEX-5、NEX-7 |
カメラのシリーズ名 | モデル名 |
---|---|
Sony α7シリーズ | α7、α7R、α7S、α7II、α7RII、α7SII |
Sony α9シリーズ | α9 |
フルサイズのカメラにも対応しているのでケラレの心配もありません。
アダプターの外観
マウントアダプターの外観を見ていきたいと思います。まずは開封の儀。かなりコンパクトな外箱ケースに入っています。
アダプターの外観は、ニコンレンズの絞りを操作する銀色のリングが目立つデザインです。リングの外見は荒削りで価格なりといった印象です。できれば黒塗りで統一した方がオシャレだったかなぁと思います。
ただし、寒冷地の撮影や夜間の撮影では絞りリングの視認性や操作性に助けられるシーンもあるかもしれません。実用性はありそうですね。
しっかりはまるの?
K&F Concept製マウントアダプターNikonG-SonyEは、お値段が非常に安いので、気になるのは装着感だと思います。加工精度が低い製品だと、固くてカメラにハマらないケースも中にはあります。
α7にアダプターを装着してみたところ、やや堅いと感じるものの、遊びが無くしっかりした感触で剛性は高そうでした。ガタツキやぐらつきは感じられず頑丈な作りです。標準レンズから中望遠レンズの一般的なレンズ重量でしたら、不安定さを感じるケースは無いでしょう。
使用できるレンズに制約があるの?
マウントアダプターはNikon製レンズをSony製カメラに装着できます。また、対応しているレンズはNioknのGレンズとDレンズです。いわゆるオールドレンズも、このタイプに対応するレンズであれば使用することができます。
DレンズとGレンズを簡単に説明すると、絞りレバーまたは絞り環が備わっているレンズの事です。以下はニコンGレンズです。
また注意点としては、最新のEレンズには対応していないので気をつけましょう。ニコンレンズは、Dレンズ → Gレンズ(普及) → Eレンズ(最新)と進化しており、形状や機構が変更されています。
各レンズタイプの違いについて不明な場合は、以下で大まかに確認してみましょう。
ニコン(G)レンズとは?
レンズの型式は、レンズの製品名で判別することができます。絞り値に続く英字で見分けが付くのですが、例えば…
- AF-S NIKKOR 85mm f/1.8
G
- AF-S NIKKOR 18-35mm f/3.5-4.5
G
ED - AF-S NIKKOR 70-200mm f/2.8
G
ED VR II
上記はNikonレンズの中でも「ニコンGレンズ」と呼ばれています。Gレンズは現在最も普及しているニコンレンズです。Nikon Gレンズの特徴は、以下の写真をご覧頂くと見分けられます。
一例ですが、AF-S NIKKOR 85mm f/1.8Gを見てみましょう。
ニコンGレンズは、上記の画像のように、絞り(F値)を操作するレバーがレンズ後玉に付いているのが特徴です。
実はニコンはつい最近まで、このように絞り制御が機械的でした。上記画像のような絞りレバーをカメラ本体で操作する事によって、F値を制御する仕組みになっています。
また、SIGMA(シグマ)やTAMRON(タムロン)が製造するニコン用レンズも、同じような絞りレバーを備えています。
一例ですが、SIGMA 35mm F1.4 DG HSM(ニコン用)の裏側を見てみましょう。
やはり後玉はニコンレンズと同じような形状をしています。
ニコン(D)レンズとは?
先ほど説明した、ニコン(G)レンズよりも一昔前のモデルとしてニコン(D)レンズがあります。
- AI AF Nikkor 50mm f/1.4
D
- Ai AF Zoom-Nikkor 18-35mm f/3.5-4.5
D
IF-ED - Ai AF-S Nikkor 300mm f/4
D
IF-ED
Dタイプのレンズもやはり、レンズ製品名のF値に続く英字で判別ができます。こちらは絞り環と言われるF値を操作できるリングが備わっており、手動で絞りを操作できます。
一例ですが、サードパーティー製のSIGMA 15mm Fisheyeを見てみましょう。
上記のように絞りを操作できるリングが備わっています。このDレンズに対して、前述したGレンズでは絞り環が廃止されています。
ニコン(E)レンズとは?
Nikon Eレンズはニコンの最新レンズ群で、前述したGレンズのような絞りレバーを廃止したモデルです。
- AF-S NIKKOR 70-200mm f/2.8
E
FL ED VR - AF-S NIKKOR 400mm f/2.8
E
FL ED VR - AF-S NIKKOR 300mm f/4
E
PF ED VR
Eレンズもやはりレンズ製品名で判別できます。ニコン(E)レンズは絞り制御が電磁方式となっており、他メーカーでも採用されている一般的な形状に近くなっています。例えばAF-S NIKKOR 300mm f/4E PF ED VRを見てみましょう。
レンズの後玉を見てみると、絞りレバーが見当たりません。
話を元に戻しますが、K&F Concept製マウントアダプター「NikonG-SonyE」では、絞りレバーまたは絞り環が備わっているレンズしか操作ができません。上記のようなニコン(E)レンズの絞り操作はできませんので、予め注意しましょう。
Tips:ニコン(E)レンズの活用
実はニコン(E)レンズは、絞り制御ができないものの、絞り開放でレンズを使用することが可能です。あまり推奨できない使い方ですが、開放でも大丈夫なシーンでしたらEレンズも活用してみましょう。
※上記は同機能のマウントアダプターNFG-SaEで撮影した作例です。
電子接点が備わっていない
マウントアダプターは電子接点が備わっていません。下図のようにアダプター後側面には何も備わっていないのがお分かりになるかと思います。
つまり、レンズの情報や信号をカメラとやり取りできません。電子接点が無いと、次のような制約があります。
- オートフォーカス(AF)や顔認識AFは使えない
- レンズの撮影情報(Exif)が記録されない
- レンズの交換時にSonyカメラの手ぶれ補正値を手動設定する必要がある
特に手ブレ補正の手動設定は面倒な作業です。Sonyの手ブレ補正値設定では、使用するレンズの焦点距離を設定します。しかし、ズームレンズでは使用時に焦点距離が変動しますので、その都度設定し直す事になるのですが、実用上は難しいと思います。手ブレ補正機能は、あくまで単焦点レンズ使用時に限定して有効にすると良さそうです。
…また逆に、以下のような機能は問題なく使用する事ができます。
- ピーキングの表示
- ピント拡大機能
- カメラボディ内の手ぶれ補正
また、マウントアダプターを使用する際にはカメラの設定「レンズ無しレリーズ」を有効にする必要があります。
SONY ヘルプガイド
α6000 レンズなしレリーズ
α7II レンズなしレリーズ
レンズを取り付けていないとシャッターが切れない場合の設定方法についての解説です。
正確な絞り値が分からない
この手のマウントアダプターでは宿命とも言える問題点ですが、操作したレンズの絞り値が分かりません。
マウントアダプターの絞りリングは左右に刻印されているアイコンと、現在位置を示す目盛りのみです。
こちらのマウントアダプターは、左側に回すと絞り開放になり、右に回すと最小絞りになります。マウントアダプターの絞り操作にはクリック感があり、約1段ほど絞れる仕組みのようです。しかし、常に1段という訳ではなく正確ではありません。
また絞りリングの回転角度が狭いのが気になりました。スナップ撮影では、ちょっとした操作で大きくF値が変化してしまう事もありそうです。
内面反射でフレアが入ることも
内面反射とはレンズやマウントアダプター内部で光が乱反射して、撮影写真に意図しない光が写り込んでしまう現象の事です。
今回撮影した際にも、一部の写真で内部反射と思われるフレアが入り込んでしまいました。写真の隅から差し込んでいる光がフレアと思われる光です。
ただし、殆どのケースでは気になるレベルではありません。強い光を画面フレームの外に配置した際に、光が写り込んでしまうようでした。
幸い、Eマウントのカメラには、電子ビューファインダーが搭載されています。ファインダー内でフレアが入り込むのか予め把握する事も容易です。強い光を画面の端に入れないなどの、撮影アングル上の工夫で簡単に回避できそうです。
内面反射が気になる場合の対策方法としては、Amazonで上記のような植毛紙が売られています。逆光時やイルミネーション撮影において、植毛紙をマウントアダプターの内側に貼るなどの対応を行ってみるのも良さそうです。
オーバーインフにより最短撮影距離が伸びる?
マウントアダプターによくあるのが、最短撮影距離が伸びてしまう問題です。
これは、近くの被写体を撮影できる距離が、アダプターによって僅かに長くなってしまう現象です。
原因はオーバーインフと言われています。アダプターによって異なるのですが、無限遠(遠い位置)にピントが来るように敢えてアダプターの全長を短く設計・加工している製品が多いようです。これをオーバーインフと呼んでいます。
つまり、アダプターによってレンズ全長が僅かに異なるので、購入したアダプターによっては最短撮影距離が変わってきます。イメージとしては、接写リングの役割と真逆の効果です。
Kenko 接写リング デジタル接写リングセット フルサイズ対応 10mm/16mmセット
カメラとレンズの間に装着すると、最短撮影距離を3通りの倍率で縮めることが可能になる接写リングです。小さなものを撮影する際に便利です。
レンズとカメラの間に距離があると最短撮影距離が短くなるんですが、これとは逆にレンズとカメラの距離が短くなると最短撮影距離が長くなります。
それでは、実際に2種類のアダプターで最短撮影距離が異なるのか、比較してみたいと思います。
実は私は「K&F Concept製マウントアダプターNikonG-SonyE」を使用する以前から、似た種類のマウントアダプターレイクォール製NFG-SaEを所有しています。
今回は、K&F Concept製マウントアダプターとNFG-SaEの最短撮影距離を簡単に比較してみたいと思います。
比較結果は次のようになりました。K&F Concept製マウントアダプターが僅かに最短撮影距離が伸びてしまうようです。
NFG-SaEは僅差ですが、最短撮影距離が短いようです。
マクロ撮影など、近くのものを撮影する際にはオーバーインフも考慮しておいた方が良いかもしれませんね。
周辺画質は?片ボケはあるのか?
続いて、撮影した写真の画質を見てみましょう。マウントアダプターの平行度は良好か?また、片ボケは発生しないかをチェックしてみたいと思います。
K&F Concept製マウントアダプター「NikonG-SonyE」にSIGMA 35mm f1.4 DG HSMを装着して壁を撮影してみました。
撮影した様子はこちら。
α7RIIの撮影画像(オリジナルサイズ)も用意しました。もし興味がありましたら等倍でご覧ください。
アダプターの絞りステップ数 | 撮影画像 |
---|---|
1 (開放F1.4) | ステップ1の画像(7952x5304) |
2 | ステップ2の画像(7952x5304) |
3 | ステップ3の画像(7952x5304) |
4 | ステップ4の画像(7952x5304) |
5 | ステップ5の画像(7952x5304) |
6 | ステップ6の画像(7952x5304) |
7 (最小絞り) | ステップ7の画像(7952x5304) |
撮影した印象としては、片ボケは見られず、隅までしっかりした写りでした。
他のアダプターと比較して画質は違うの?
先ほどと同じように「K&F Concept製マウントアダプターNikonG-SonyE」と、Rayqual製マウントアダプターNFG-SaEを比較してみました。
壁にピントを合わせた時の距離目盛りは、前述したオーバーインフの影響なのか、僅かに異なるようです。
それでは簡単に比較してみたいと思います。
F1.4絞り開放の比較
まずはSIGMA 35mm F1.4の絞り開放の画質を見てみたいと思います。Lightroomにて2種類のマウントアダプターで撮影した写真を並べてみました。スマホでご覧になっている方は拡大してご鑑賞ください。
比較画像の左側がK&F Concept製、右側がRayqual製のアダプターです。
F1.4の比較では中央は両者とも光軸ズレは無さそうで、同程度の解像度です。ですが、隅の画質はK&F Concept社の方が良く解像している印象です。これは驚きの結果です。
F5.6(?)の比較
続いてSIGMA 35mm F1.4の絞り値F5.6(恐らくその辺り)の画質を比較してみたいと思います。両者のアダプター絞り値が正確に把握できないので、あくまで参考程度の比較となるのはご了承ください。
比較画像の左側がK&F Concept製、右側がRayqual製のアダプターです。
F5.6の比較では、両者とも隅々まで解像している印象です。ですが、やはりK&F Concept社の方が僅差で解像しているように見えます。
それにしても、Rayqual製アダプターが1万円以上する製品ですので、これを考えるとK&F Concept製のアダプターは凄いコストパフォーマンスを発揮しているようです。
ご注意
当検証結果は個人撮影によるもので、誤差や機材の経年変化もあることを予めご了承ください。あくまで参考程度にしていただければ幸いです。
まとめ
ということで、今回はK&F Concept社製のマウントアダプターNikonG-SonyEのレビューをまとめました。
2017年にマウントアダプターのKIPONで有名な焦点工房も販売代理店として取扱を始めたメーカーですが、記事内でいくつか試し撮りした通り、内面反射の問題や電子接点非搭載のアダプターである点が不便と感じるものの、価格が安く画質が良好である事が分かりました。
コストパフォーマンスを考えると、検討する価値のある製品と言えそうです。激安だから加工精度は…と予想していましたが、良い意味で期待を裏切られました。また、Commlite社製のCM-ENF-E1 PROのように、電子接点と絞り機構を備えたマウントアダプターのような製品が同社で商品化されたら嬉しいなと思いました。
ニコンレンズをソニーのカメラで使いたい方に当記事が参考になりましたら幸いです。
(お知らせ)誌面に掲載されます
2/24に発売される「 みんなのPhotoshop RAW現像教室 - 著:大和田 良/インプレスブックス 」にて、過去に提供した作例2点が掲載されることになりました。
レタッチに関する書籍ですが、多彩なレタッチ表現が見られる内容となってますのでぜひご覧ください。