撮った写真や制作した画像コンテンツを、手軽に公開できるようになった反面で、壁紙やグッズに盗用・二次利用されてしまうケースをよく目にするようになりました。私も家電製品情報の広告に写真を無断使用されてしまう被害に遭いました。
それでは、盗用や二次利用を防ぐためにはどうしたら良いのでしょうか?少し考える機会がありましたので、自分なりの考えをまとめてみたいと思います。
結論から先に言ってしまうと、盗用されても妥協できる小さい画像サイズに縮小し(または劣化処理)、ウォーターマークを付けて公開するというのが、唯一の対策方法だと私は考えています。
ちなみに、ウォーターマークとは自分のサイン画像などを上に重ねる事です。一例を挙げると以下に挙げる写真のようなイメージです。
ウォーターマークは「画像透かし」とも呼ばれています。ウォーターマークによってコンテンツの著作権を持っているという事を予め示しておくことは重要です。仮に盗用されたとしても、必ず盗用した痕跡は残りますし、レタッチ・編集前のオリジナルデータを持っていればコンテンツの所有者である証明になります。
なぜそれが最善の方法なのか?他にもっと良い防止方法はないのでしょうか?ここから後半は、上記のような結論に至った理由を詳しく書いていきたいと思います。
2017年3月追記
当記事とは無関係ですが、アサヒカメラで「損害賠償&削除要請マニュアル」が掲載されてネット上で大変話題になりました。
また、数年前にネット上の写真を多数盗用して写真集を販売していた、横田升吾氏が2017年2月に著作権法違反の容疑で逮捕されて大きなニュースになりました。更に、画像を盗用したサイトをGoogleに削除してもらった事例も見られるようになってきました。
上記の記事では、加工前のデータを持っている事が重要だという事が参考になります。
コンテンツの扱いについて年々意識が高まっているのは朗報ですね。2017年に入り、写真の盗用に対してイラスト制作者や写真家が自ら被害請求を行い、コンテンツ使用料金を回収したという実録を見かけるようになりました。
旅するフォトグラファー
キュレーションメディアに写真をパクられたら請求書を送ることにした
ねとらぼ
Twitterイラスト無断転載、賠償金40万円支払いで決着 被害イラストレーター「とにかく魚拓&スクショで証拠保全を」
盗用した側との生々しいやり取りや、請求の方法が分かりやすく、勇気づけられる記事でした。
目次
はじめに。写真画像は盗みたい放題
サイトやSNSで作品を公開されているものは、保存またはダウンロードをするのが難しい仕組みになっているケースを見かける事ができます。一例を挙げると以下のような機能です。
- 右クリック防止機能
- 縮小された画像
この機能を見て盗用されないと安心感を抱いている方がいらっしゃるかもしれません。
ですが、実際は盗用に対して時間稼ぎとなるだけで、その気になれば簡単に保存できるのが実情なのです。詳しい理由は後半で説明していきますが、極端な事を言ってしまうと、自身のサイトやSNSサイトに公開したコンテンツは保存・盗用される可能性があるということを覚悟する必要があります。
写真投稿サイトに関しては、海外では500pxやFlickr、日本ではPHOTOHITOやGANREF、facebookなどが有名かと思います。ですが、これら全てのサイトについても先程説明したような実情が当てはまります。
試しに私自身が、これらのサイトで画像をダウンロードできるのか試してみたところ、アップロードされた画像サイズをパソコンへ保存する事ができました(方法は非公開)。facebookでは投稿した画像を誰でも保存できるのが周知の事かと思います。その他では特に500px、公開サイズを制限してないFlickrユーザーは危険かなと思います。
盗用防止策の決定打が無いのが現状
サイト側で一般的に取られている盗用対策は以下のようなものが有名です。ただし、全てに共通して言えることは盗用を100%防止できるような「銀の弾丸」が存在しないという事です。理由はこの項の後でいくつか説明します。
右クリック禁止
最も有名な方法。マウスの右クリックを呼び出せないようにwebサイト側で制限
コンテンツの一部選択、または全選択の禁止
これも右クリック禁止に次いでポピュラーな対策方法。マウス・ドラッグ操作や文章、画像の選択をWebサイト側で制限。選択という操作自体を禁止させる
ブラウザからのメニューの呼び出し禁止
右クリック禁止よりも乱暴な手法。メニューを使用できないようにWebサイト側から制限します。右クリック禁止の他にブラウザのアドオンによる保存等も防止できる
ダミー画像の上層配置
コピーされたくない画像の上層に透明のダミー画像を配置し、下層にある画像の保存を防止
画像の上層にアイコンなどを配置
画面キャプチャー(スクリーンショット)防止対策。一見すると邪魔と思われるようなアイコンを画像上層に配置して、ウォーターマークと同様の効果を狙う
ブラウザの非アクティブ時にコンテンツを一時消去
こちらもキャプチャー対策。ブラウザのウインドウの選択(=アクティブ状態)が外れた瞬間に、表示しているコンテンツを一時的にクリア。外部アプリからスクリーンショットされるのを防ぐことができる
画像データを分割してサイト側で結合表示
複数にカットされた画像ファイルをパズルのように配置し、見た目を一枚の画像のように見せる。ダウンロードや後述する画像検索サイトによる盗用防止効果が高いと思う。海外でタイリングと呼ばれてる手法。しかし配信方法に一手間掛かるという難点がある。
フィードの配信内容を一部に留める
コンテンツがブログの場合には、フィードとなるAtom/RSSファイルから情報を抜かれる可能性もあります。配信する内容を概要だけに限定するなど、フィード配信方法の工夫が必要
これらの方法は盗用する側にとっては、ダウンロードしにくい状況となります。サイト側はこれらの方法を複数組み合わせると、盗用の防止にある程度の効果を見込めるでしょう。また後半で補足説明する電子透かしを組み合わせると、万が一盗用されてしまった後でも画像を追跡する事ができます。
当ブログでも、使い勝手を損なわない程度に一部を組み合わせて採用しています。複数組み合わせれば、盗用を諦めてくれる確率が上がるでしょう。
ただし、分かる人にはあっさりと保存されてしまう可能性もあります。繰り返しになりますが、完全に盗用を防止することは不可能であり、盗用に対して対策できることは時間稼ぎです。
サイト側の盗用対策が無意味になるケース
前述では、サイト制作者・運営者側が取りうる盗用対策について、まとめてみました。ところが以下のケースではあっさりと保存・盗用されてしまうので、予め知っておいた方が良いでしょう。
シェア先のサイトで保存されてしまう
前述のように、サイト側で盗用防止の対策をある程度行ったとしても、画像やコンテンツが盗用されてしまう可能性があります。
例として、以下をご覧ください。こちらはFlickrの写真を見ているユーザーさんが、Tumblrでシェアした記事です。
http://nakasonotumblr.tumblr.com/post/149462447519/aurorae-magic-wand-by-tea81p
http://aurorae.tumblr.com/post/149460464276
元の画像はこちらです。
シェアされる事自体は感謝・歓迎すべき事です。
ただし、他のサイトにシェアされた場合には、自身のサイトで保存防止対策を講じたとしても、シェア先のサイトでは簡単に保存されてしまいます。自身のwebサイトで写真を公開する以外に、SNSなどへ写真を公開されている方は、このケースについても予め覚悟しておきましょう。
上記の記事をご覧いただくと分かりますが、TumblrにはReblog(リブログ)という機能があります。リブログはTwitterのリツイートのような機能で、自身のTumblrブログにも同内容の記事を投稿することができます。
上記の記事を見るだけでも1枚の写真がかなり拡散されているのが分かり、またそれと同時に一旦公開したらコンテンツの2次利用に関するコントロールが難しい状態になっていることもご理解して頂けるかと思います。
画像検索システムに画像を取り込まれてしまう
- 画像検索サイト(例えばgoogle画像検索)
- サイトを巡回するロボット
- キュレーションメディアサイトのプログラム
- その他Webサービス
に画像を取り込まれてしまうと、画像を簡単に保存されたり二次利用されてしまいます。
こうなると、サイト内でいくらコンテンツ盗用対策を講じても無意味です。わざわざ自身のサイトに訪れなくても、画像検索サイトから画像を探せば、簡単にダウンロードされてしまうのです。
最近では、「まとめサイト」の投稿時に貼りたい画像を、Google画像検索を利用して探し出せる機能が搭載させれているサービスもあります(※現在NEVERでは仕様変更により使用不可能となっている)。
NEVERまとめ
Google画像検索API終了の影響 - NAVER
こうした事から、まとめサイトの投稿者が、投稿時に著作権を意識すること無く二次利用してしまうケースもあるでしょう。まとめサイトはNEVERまとめ以外にも星の数ほどあるので、こういったコンテンツの2次利用が起こり得ることを認識しておいた方が良いかと思います。
まとめサイトは、閉鎖されたDeNAの「WELQ問題」を発端に、コンテンツの扱い方について社会問題になっています。
IT media ニュース
NAVERまとめに無断転載“された”側の訴え……「抗議への対応に驚愕」 - IT media ニュース
ディー・エヌ・エー(DeNA)の医療サイト「WELQ」の問題を発端に、キュレーションメディアの問題がネットを騒がせている。著作権者への配慮をアピールしているが、無断転載の被害に悩むコンテンツホルダーは少なくない。
大手まとめサイトを見る限り、やはりコンテンツ制作者側で2次利用または盗用されないように努力する必要があるというのが、現状と言えそうです。
対策:検索を禁止する
画像検索に対する対策は以下の様な内容が考えられます。サイト内のコンテンツを、Googleの画像検索を禁止するようにサイトを変更します。
またSNSサイトでもGoogle画像クロールを禁止する設定ができるサービスもあります。一例を挙げると、FlickrのSettings > Privacy&Permissions
の設定です。Flickrをお使いの場合はそちらを一度確認すると良いでしょう。
ただし、外部から写真を見てもらう機会も減ることに繋がります。慎重にご検討ください。
対策:タイトルやタグを抽象的な内容にする
公開する写真に含めるメタ(写真タイトルやタグ)は説明的なものではなく、抽象的な内容にすると良いでしょう。タイトルなどの情報から検索される確率は下がり、盗用の切欠を作らせない効果が期待できます。
ただし、コンテンツが有名になった時は効果が薄くなります。また前述したような閲覧ユーザーによるコンテンツ・シェアが行われるサイトでは、閲覧ユーザーがメタ情報を新たに追記する可能性もありますので、覚悟しておきましょう。
盗用された画像を発見する方法
今回は盗用を未然に防ぐという観点で記事を書きました。最後に、盗用された画像を発見する電子透かしについて簡単に触れたいと思います。
Google画像検索を活用する
よく知られている方法として、Google画像検索を活用する方法があります。Google画像検索とは、検索したい画像を選んで検索を開始すると、類似する画像を貼り付けているサイトを検索結果として表示させることができる機能です。
まずはGoogle画像検索を使って、盗用されたコンテンツを探すと良いでしょう。
電子透かしの技術を活用する
電子透かしとは、画像に見えない著作権情報を埋め込む技術のことです。設定できる透かしの強度
によって、画像のリサイズをしても、画像の著作権情報からネット上の盗用画像を追跡・発見することが出来るそうです。デメリットはライセンス料金が高額で、敷居が高いことです。
ソフトはPhotoshopのプラグインであるDigimarc for Imagesが有名です。以下の記事で貴重なレビューがありますので、ご覧ください。
はじめましての After Effects
【Photoshop】Digimarc for Images買ってきた【電子透かし】
ただし、画像を盗用または2次利用された後で、盗用元と手続きや、やりとりを行うことは、かなりの労力を必要とすると思います。できる事ならば未然に盗用を防ぐ方法を対策した方がいいのではないかと、私自身は考えています。
また、記事の冒頭でも触れた、画像透かし(ウォーターマーク)でも盗用後の損害請求の証拠として効果が期待できると思います。詳しくは当記事の序盤をご覧ください。
2次利用・盗用されてしまった時の対処法
万が一、二次利用や盗用されてしまった時の対処法としては、
Googleに報告し、検索対象から削除
盗用された先がサイトやブログである場合に有効な手段です。
差止や損害賠償の請求
コンテンツの使用料や慰謝料を請求する方法です。
などが考えられます。どちらの方法も行動に移す前に盗用先のサイトなどを画像で保存しておいたり、盗用されたデータのオリジナルデータを証拠として用意しておくことが重要です。
サイトを記録として残しておくには、こちらのサービスが便利です。
Googleに削除依頼する
googleへの報告は、以下のサイトで紹介されている手順で行うことができます。
海外SEO情報ブログ
無断コピーされたコンテンツをGoogleのインデックスから削除する方法 〜 DMCA侵害申し立てフォームから送信可能
上記の方法で、画像を盗用したサイトを削除して貰った経緯をブログで書かれている方がいらっしゃいました。
これは凄くリアルで参考になる内容でした。オリジナルサイズを縮小して公開するというのが事後の対応で重要になりますね。
差止めや損害賠償の請求をする
また、差止めや損害賠償請求については以下が参考になります。
サイト上での画像の盗用・・・ 対策法は? - WEBに関わる法律講座
http://y-commons.com/jiji/04-3/
法律については詳しくなかったので、ハッとさせられる内容でした。大切な部分を引用させて頂くと
- 画像の使用料をサイト上に明示
- 画像に「著作権表示」をして公開
を前もって行っておく事が、賠償請求にあたり重要なポイントになるようですね。また、冒頭でもご紹介しましたが、実際にコンテンツ使用料金を請求された記事も大変参考になります。
旅するフォトグラファー
キュレーションメディアに写真をパクられたら請求書を送ることにした
リサイズと著作者の明記が最後の手段
冒頭でも先に触れましたが、コンテンツの盗用防止効果があるのは、リサイズ後、その画像にウォーターマークを付けて公開するという方法だと、私個人は考えています。
「そんなの分かるよ!」とか「原始的!」と言われてしまうかもしれませんが、これが最良で簡単な方法ではないでしょうか?ただし、オリジナルデータの鑑賞や、高画質でコンテンツを楽しんでもらうという事ができなくなります。前述のような盗用ケースを知った上で、公開コンテンツの品質について妥協点を決めておく必要があるでしょう。
最後に
ということで、今回は画像の盗用を防ぐ方法と、その限界について詳しく書きました。大切なのは公開した画像が、外部から簡単に利用されてしまうという現状を認識する事です。
内容がやや精神論のようになってしまいましたが、盗用に悩まされている方の何かの参考にして頂ければ幸いです。また他に良いアイディアがあるよっという方がいらっしゃいましたら、ぜひご意見を伺わせて下さい(^ ^)それでは!